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これはやっぱり音楽だ!! [三味線]

燕子花図屏風.jpg

素晴らしく爽やかな空気に誘われて、青山の根津美術館へ。 

美術館改築を記念し、特別展として、 
同館収蔵の国宝「燕子花図屏風」をはじめとする光琳や宗達、抱一、其一など琳派の作品が展示されています。 

午前中早めに行ったものの、入口ではすでに数人程度の列ができていましたが、 
それでもまだ余裕で、ゆったりと鑑賞することができました。 

すっきりと瀟洒でシンプルな新しい建物には、 
四季草花図屏風や其一の「夏秋渓流図屏風」などの屏風絵を中心に、扇面図や掛け軸、乾山や仁清の焼物なども加えて展示されていて、 
そのほか茶道具や仏像や殷周の青銅器などもあり、 
しばし飽きることがなありません。 


実物の「燕子花図屏風」にお目にかかるのは20年ぶりで三度目。 

そとて展示室の奥に、どーんと、金と藍と緑の六曲二双の世界が広がっています。 

うーん、さすがに本当に素晴らしい。 
イリス (アヤメ科アヤメ属植物) は世界に200を超す原種があり、
またハナショウブやジャーマンアイリスなど、非常に育種の進んだ種類もありますが、
アイリスを描いた絵として、 
世界中どこを探してもこれだけの名画はないでしょう。 

この絵の写真では、カキツバタの花は濃い紺に見えるますが、 
実際にはもう少し明るい群青色で、 
葉の色もやや明るい感じ。 

花弁はやや横に拡張して、 
カキツバタのスリムでシャープな感じよりも、 
江戸系ハナショウブの三英咲き品種のような感じを受けますが、 
そのような花菖蒲が育種されるようになるには、 
もっと時代を下らなければならないから、 
これは光琳なりのデフォルメなのどしょう。 
実際このくらい花弁に横方向への力がなければ、 
葉の縦方向の線に負けてしまうのだろうと思います。 

しかし葉の幅の広さも色もいかにもカキツバタのもので、 
ハナショウブやアヤメとは違います。 



さて、改築で展示室が広くなったので、 
かなり離れた場所からこの絵を眺められるようになりました。 


そこからこの絵全体を眺めてみて、はっと気がつきました。 
これは音楽。 

燕子花の株が上下しつつ連綿と続く様、 
これは旋律の動き。 
ちゃんとメリハリもついています。 

よく見ると、カキツバタの個体群がある程度パターン化して反復されていて、 
これも楽句や奏法の反復と感じられます。 

そしてそれぞれの六曲の折り目は、 
時間の切れ目、いわば拍節のように感じられます。 

とてもとても、音楽的な絵画ではないでしょうか。 

それも、これを見たときにふと浮かんできた旋律、 
それは箏曲、しかも「段もの」でした。 

中でも「八段の調」、あるいは「五段の調」。 

まず、群青と緑に集約された色彩が、 
これだけで箏の音色のイメージを招来する。 
三味線だと、もう少しウォームな色彩感だと個人的に思います。 


で、つくづくと思い合わされたのが、 
当時の音楽家である生田検校。 

よく知られる、いわゆる生田流箏曲の始祖とされる偉大な音楽家ですが、 
彼は1656年に生まれ、1715年に没しています。 
いっぽう尾形光琳は1658年生まれ、1716年没、 
ほとんど完全に重なっています。 
しかも二人とも、京都で活躍した芸術家。 

生田検校といえば、少なくとも芸術音楽の範疇において、 
それまで合奏することのなかった三味線と箏の合奏を始めた、 
音楽史上きわめて重要な人物。 
それも、三味線奏法を箏に反映させるため、 
「すくい」という技法が箏でもできるように箏爪に表裏をつけるよう改革を行った人。 

燕子花図の、花弁の裏側が表側とは違う、少し明度の高い色調で描かれているところなど、 
感覚的に箏の「すくい」技法を感じてしまいます。 

そういえば「五段の調」は生田検校の作品と伝えられているのでした。
ちなみに「八段の調」は生田の師北島検校の更に師である八橋検校の作と伝えられています。 

生田検校はこのほか箏の独奏曲として「砧」、箏組歌の「思川」「鑑の曲」「四季源氏」、三味線独奏曲として「十二段すががき」、長歌もの地歌曲「小笹」などの作品を残しています。 

これはやはり元禄文化という時代精神、そして京という地域性を多分に孕んでいるからこそ、 
そのように共通して感じられるのではないかと思います。 

元禄文化、元禄を中心とした江戸時代中期の文化的興隆期。 

この時期には、たとえば江戸の園芸家伊藤伊兵衛が世界初のツツジ専門書「錦繍枕」を刊行していますが、 
まったく同じ時期に江戸の音楽家佐山検校が、 
ツツジの品種多数を詠み込んだ地歌曲「躑躅(つつじ)」を作曲しています。 


私がこういうジャンルを超えた時代精神を感じ取ってしまうのは、 
ちょっとおかしいのかな? 
とも思います。 

実際このようなことに気づく人は本当にいないように感じられるから。 




それはさておき、この根津美術館の庭もとても美しく、 

新緑にカキツバタの花色も冴えて見事でした。

カキツバタ2_s.jpg
筧_s.jpg
楓新葉_s.jpg

我が家の桜 [景色]

横浜緋桜_s.jpg

二週間ぶりに実家に戻りました。
庭には七種類ほどの桜があります。
もっとも早く咲くのはキンキマメザクの「熊谷桜」と、
カンヒザクラとマメザクラの交配種「オカメ」。
これらはもうすっかり終わっていました。

今まだ見られるのは「染井吉野」、「横浜緋桜」、「陽光」。
この横浜緋桜は、金沢のヤマザクラの名品「兼六園熊谷」とカンヒザクラを交配して
生まれた品種で、横浜の育種家によって作出されたところから名付けられました。

兼六園熊谷も濃い花の品種ですし、カンヒザクラも濃紅色、
両親の血を受け継いで、あでやかな濃いピンク色の花を咲かせます。

染井吉野も横浜緋桜もだいぶ散っていて、地面に散り敷いたところもきれいです。
散り敷く横浜緋桜_s.jpg



こちらは染井吉野。
手前の柿の木がちょっと邪魔ですが。

染井吉野_s.jpg

紀州の名桜「権現平桜」やマメザクラの「鴛鴦桜」も咲き始めていました。

最後に咲くのがカスミザクラ。
まだ蕾です。
実は、これは自分で植えたのではなくて、鳥の「おみやげ」。

このほか、南天とかアオキとか、
庭には鳥のおみやげがけっこういろいろ生えています。




棹の原木 [三味線]

紅木原木_s.jpg


昨日は都内で稽古。

三味線屋さんの部屋を借りてお稽古します。
稽古の最中、何かパーツが必要になってもすぐ間に合うのが便利。

昨日は、三味線の棹の原木が入っていました。
普通なかなか見ることが出来ません。

三味線の棹の原材料は、非常に緻密で硬い木を使います。
やわらかい木だと、指で押さえるところがすぐに減ってしまいますし、
音色が冴えません。

高級品では紅木 (こうき) という木が人気があります。
他に紫檀 (したん)、スネークウッド、樫など。

稽古用では、花梨 (かりん)が普通です。


この写真の上四本のうち、左二本が紅木です。
これはインドに自生するマメ科の樹木で、その芯の部分を使います。
濃い紅紫褐色をしているのでその名があります。
その中でも上等なものになると、細かな模様が浮かび出て美しいものです。
現在高級三味線のほとんどが、この紅木です。
インドでは輸出が規制されているので、
年々手に入りにくくなっています。

右の二本はスネークウッド。
これもマメ科ですが、南米産です。
紅木よりも更に硬く、しかも弾力もあります。
ヴァイオリンなどの弓にも使います。
黄褐色に濃いまだら模様が蛇を思わせるのでこの名があります。
三味線の材料としてはあまり使われません。

これが「棹師」によって加工されて、三味線の棹になるわけです。

三味線_s.jpg


お店の三味線のうちいくつか。

奥の二つは稽古用の「花梨」棹。
花梨とはいっても果樹の花梨ではなく、
東南アジアに自生する木です。

稽古用といっても、二つとも細かな模様が浮き出ていて、
こういうものは音色も良いことが多いです。

手前の四挺は、いずれも高級品の紅木棹。

赤っぽいのと黒っぽいのがありますね。
赤っぽい方ができたてです。
紅木の棹は、時間が経つと次第に黒く変化していきます。



サークルの指導 [三味線]

三十年前から、私は和楽器の普及のためと、
地域の生涯学習に役立ちたいと思い、
関東甲信の公民館などの三味線サークルをいくつか指導しています。

私の専門の三種の楽器のうち、私の個人的な門弟から見ると、
三味線は年齢層が最もまんべんなく、下は小学生から上は八十代までいます。
近年は若い世代に三味線好きがどんどん増えているのですが、
サークルでは30代、50~70代が多いです。

今夜はF市の三味線サークルの指導に行きました。
ここは発足して二十年、現在十名の会員が三味線の学習をしています。
最初からのメンバーも数名、ずっと続けています。
西船2_s.jpg
西船_s.jpg


箏やピアノの経験者もいますが、
はじめて楽器を持つという人がほとんどです。
基本からきちんと指導しますし、
先輩からもいろいろアドバイスがあるので、
落伍する人もほとんどなく、
二年もすればかなりいろいろな曲を弾くようになってきます。
限られた時間ですし、ボランティアに近い状態での指導ですから、
いつも集団での学習ですが、
ここでは長く続けている人と新入の人を二部屋に分けて指導しています。
こういうサークル活動における集団学習の良いところは、
とても雰囲気が和やかなこと。
和気あいあいという感じです。

それでも5月に発表会を控えているので、みな練習にも力が入っています。
曲は杵屋正邦作曲の三絃三重奏曲「三下りの祝」。
こんなけっこう本格的な曲もこなすまで上達してきました。


新年度授業開始 [三味線]

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昨日と打って変わって肌寒い雨天、
講師として通う大学の新年度の講義がはじまりました。
多摩丘陵にあるキャンパスまで家から一時間四十分、
これからまた毎週通います。

受講する学生は今年は少なめ。
この方が密度の濃い指導が出来るので、
正直言ってありがたい。
多い年には備品の楽器の数より学生が上回ってしまうこともあり、
こうなると大変。
しかもまじめそうな学生君たちなので、
今年の授業はやりやすそう。
これは胡弓の授業。
全国でも胡弓が選択必須科目なんて、他にほとんどないでしょうね。

ここでご注意願いたいのは、
胡弓は日本独特の楽器だということ。
中国の二胡と混同する方がしばしばいらっしゃるのですが、
まったく違う楽器です。

私は胡弓奏者でもあるので、
胡弓も教えているのです。


キャンパス内には大きな染井吉野が何本もあるのだけれど、
いつもの年よりもまだ残っていて、
一本だけある紅枝垂はまだこれから。
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お花見 [景色]

御苑2_s.jpg
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昨日は、日曜日としては今月唯一のお休み。

新宿御苑へお花見に。
汗ばむほどの陽気に、染井吉野などははらはらと雪のように散り、
弁殿や一葉、鬱金は満開。
関山や松月、福禄寿、兼六園菊桜はまだ蕾。

シャガやザイフリボク、ハンカチノキの花も美しく、
素晴らしい一日でした。

私はふだん和服を着ていることが多いので、
こんな格好でお花見です。
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桃源郷 [景色]

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今日から信州の稽古。
特急あずさで中央線を松本に向かいます。
どこもかしこも桜をはじめ、花、花、花。
途中、甲府盆地は桃の花盛りです。
このあたりは桃と葡萄の産地で、
中央線の沿線にもあちらこちらに桃畑が広がり、
濃く美しい「桃色」でいっぱいです。

いつもは染井吉野が散った頃に盛りとなるのですが、
今年はまだ染井吉野も残っていて、それは美麗な眺めです。

数年前、いつも車窓から眺めるだけではと思い、
山梨市駅で下車して見に行ったことがありました。
もちろん果樹として栽培しているのですが、
花は本当に見事でした。

ただ、近くから見ると、花が枝にしがみついている感じで、
やはり桃は遠目が佳しという気がします。

それに比べると、桜は風情があって、遠目で佳し、近くから見るも佳し、ですね。

梅はどうでしょう、これは近くでじっくりと見るのが良さそうです。

山桜 [景色]

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おだやかな春の日になりましたね。

教室近くの公園では染井吉野が満開。

平日にも関わらず大勢の人で賑わっていました。

ここの桜はほとんどが染井吉野ですが、

数本だけヤマザクラが植えられています。

私はヤマザクラの楚々とした雰囲気が好きなのですが、

この美しさに注目する人はまずいません。

静かに鑑賞するにはとても良いのですが。


 山桜 霞の間よりほのかにも

 見てし人こそ 恋しかりけれ


飛鳥山 [景色]

きのう、東京王子の近くの稽古場へ行きました。

帰りがけに飛鳥山に立ち寄ってみました。

ここは徳川吉宗が桜を植えさせ、江戸市民の憩いの場とした所として有名です。

染井吉野が八分咲き、大木が多くなかなか見事です。

日曜日でもあり、肌寒い気候でしたが、お花見の人々で大変な賑わいでした。

飛鳥山の桜と明治通りを行く都電。

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染井吉野は江戸時代も後半に生まれた品種だということですから、

もともと吉宗が植えさせたのは山桜か里桜、もしくは江戸彼岸だったのでしょうね。

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染井吉野も美しいですが、元の桜が少しでも残っていればなおいいのにと思いました。

一本だけ、「八重紅大島」が花をつけていました。

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駒がないとコマるんです [三味線]

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最初からダジャレですみません。

これらは三味線の「駒」。

洋楽器だとブリッジ、中国楽器だと琴馬ですね。

弦の振動を皮に伝える大切な役割を果たします。

これがなければ、音が出ません。

演奏会の時にこれを忘れると大変なことになります。

だから、駒がないと本当に困るんです。

将棋と同じですね。


三味線は、世界の数ある弦楽器の中でも、とりわけ駒の発達した楽器だと思います。


まず、ジャンルによって使う駒がみんな違います。

材料だけでも象牙、べっ甲、水牛の角、竹、クジラの骨、木(紫檀、紅木、樫、ツゲなど) と、じつにさまざま。

重さや高さ、構造もいろいろな違いがあります。



それは何のためかというと、とことん音色が追求されているからです。

材質をはじめ、高さや肉厚、重さでも音色が変わってくるので、

特に地歌などでは、プロになると一人の演奏家が何枚も駒を持っていて、

演奏する曲や調弦、皮の張り具合、その日の湿度や温度などに合わせて使い分けます。


日本人の音色に対する鋭敏な感覚が、これほどまでの駒を作り上げたのだと思います。

こういう感覚は洋楽器にも見当たりません。


この写真でも、ほんの一部です。

下から、小唄、常磐津、長唄、地歌、地歌、津軽三味線の駒。



個人サイト http://www.co-q.com


主宰する絃詩会 (いとうたかい) 公式サイト http://www.shamisen.net


講師を務める三味線サークルのサイト http://www.shamisen.net/c-circle.htm

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